Ikkoku-Kan Is Forever..!!のブログ

バイトをして大学に行くお金を貯めながら時間を見つけて少しづつ本を読もう。

2018-08-15から1日間の記事一覧

加藤周一『日本文学史序説』(6)

五.加藤の表現(日本文学史) 加藤は1200年に及ぶ日本文学の歴史を〈土着〉という即自的な自我が〈外来〉という他者を通じて対自化され、相互の交流を通じて創造的な自我(藝術)が生まれる過程―それはさながらヘーゲルの『精神現象学』を髣髴させる―を…

加藤周一『日本文学史序説』(5)

四.加藤の思索(個人主義について) 加藤の思想の意味は、戦後日本におけるデモクラシーの成立を独自の立場から検討し、これを思想化したことにある。それは、本来キリスト教社会における個人主義の伝統を背景に成立したデモクラシーが、非キリスト教社会で…

加藤周一『日本文学史序説』(4)

三.加藤周一の着想 加藤のいう〈藝術〉とは何か。この問いは、加藤周一の思想とは何か、という問いと同義といって良い。周知のように雑種文化論の背景には、加藤の西洋体験が存在するが、加藤は自身のフランス留学を振り返ってその印象を次の様に語っている…

加藤周一『日本文学史序説』(3)

二.加藤周一の問い 1951年から55年までフランス政府の半給費留学生として渡仏していた加藤は、帰国後まもなく「日本文化の雑種性」(1955)という文章を発表する。有名な加藤周一の「雑種文化論」を、ここで仮に同論文にはじまり「雑種的日本文化…

加藤周一『日本文学史序説』(2)

一.戦後の出発 加藤周一とはいかなる人物か。その自伝的小説である『羊の歌』から浮かび上がるのは、幼いころから周囲と馴染めず、常に自己の疎外感を拭い切れないでいる「孤独な観察者」としての姿である。[i] 私は生涯を考え、他人との関係についてではな…

加藤周一『日本文学史序説』(1)

加藤周一の読み方 加藤周一という名前は『日本文学史序説』の筆者として高校生の時から知っていたものの、実際に加藤を読んだのは大学に入ってからだった。実際に加藤のテキストに触れると、独特の文体というかその感覚に戸惑ったのを覚えている。一応、文学…